不動産取得税の還付/実例で解説
本記事作成のきっかけは、Bさんからのこんな相談でした。
4年前に、妻A名義で土地と古家を購入し、おととし、私名義で家を建てた。
不動産の税金のことをきちんと知っておこうと思って色々調べてみた。
建物については長期優良住宅なので固定資産税は向こう5年間、2分の1に減額されることは分かった。
土地は宅地になっているから、6分の1が課税標準になることも分かった。
4年前に購入後、しばらくして、府税事務所から不動産取得税の通知が来たので、「はよ、払ってすっきりしとこ」と思って、すぐに納付書記載の金額を支払った。
ところが、どうも払い過ぎがあるのかもしれないと思うけど、どうやろか?
とのことでした。
「不動産取得税の計算なんて面倒だわ、でもお客さんの困りごとやし」と思い調べてみました。
Bさんから聴き取ったこと、私が調べたことを基に本記事を構成してみました。
みなさまのケースにピッタリ当てはまらないかもしれません。適用パターンは色々ありますから。
しかし、払い過ぎた可能性があるのならば、調べてみる価値は大いにあります。
本記事がみなさまのお役に立てば幸いです。
目次
不動産取得税還付事例
図にするとこのようになります。
AさんBさんは夫婦です。
①でAさんが土地と家屋を取得しました。
しばらくして、大阪府税事務所から不動産取得税の納税通知が送られてきました。
AさんBさんは特に疑問に思わず、通知書記載の金額(378,800円)を支払いました。
AさんBさん夫婦が払った不動産取得税について還付を受けることができるかどうかが今回のテーマです。
結論から言いますと、今回、AさんBさんは還付を受けることができました。
土地と建物に分けて見ていきましょう。
1.土地の不動産取得税
土地の不動産取得税はどうやって計算するのでしょうか。
税率は3%(土地と住宅は平成30年3月31日までに取得したものについて)です。
ですから、
ただし、
宅地を平成30年3月31日までに取得した場合については、
課税標準額を2分の1した金額が不動産の価格となります。
ここまでをまとめると
となります。
この計算式で出た金額が、原則的な金額になります。府税事務所のパンフレットに「当初税額」とあるのは、この金額のことです。
1-1.土地の不動産取得税の軽減措置
ところが、不動産取得税には軽減措置があるのです。
適用パターンは何通りかあるのですが、Aさんのケースに沿って説明します。
まず「住宅用土地にかかる減額」を検討してみます。
※大阪府のケースです。都道府県により異なりますので、詳しくはお近くの都道府県税事務所に事務所に問い合わせるか、サイトをご覧になってください。
軽減が適用される場合の計算式は、
です。
当初税額は、先ほどの原則金額です。
では、次に、減税額を考えてみましょう。
1-2.前提条件の確認
大阪府のサイトを見てみると、こう説明されています。
新築住宅
①土地の取得後3年以内(平成30年3月31日までの取得に限ります。)以内に、その土地の上に特例適用住宅が建築された場合(ただし、次のいずれかの場合に限ります。)
ア 土地を取得した者がその土地を特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合
イ 省略
土地の減額を考える際には、その上にどんな建物ができたのかを検討するのです。
適用パターンはいくつかあるのですが、今回のケースでは①アの規定に該当しました。
1-2-1.土地の取得後3年以内に住宅が建築されたか
AさんBさんのケースだと、
Bさん名義の建物の表示登記は「平成26年2月14日新築」として登記済み。所有権保存登記も済んでいる。
土地をAさんの奥様が取得したのは平成24年2月14日ですから、「土地の取得後3年以内に建築」されており、この点はクリア。
1-2-2.特例適用住宅にあたるか
次に「特例適用住宅」にあたるかを考えます。
「特例適用住宅」とは住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下のものを言います。(※共同住宅等の場合は説明省略しています)
Aさん宅の床面積は、123.79㎡なので、この点もクリア。
1-2-3.土地を取得した者がその土地を特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有しているか
最後に、「土地を取得した者がその土地を特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合」に該当するかを見ます。
Bさんの奥様Aさんは土地を購入した後(平成24年2月14日)、Aさん名義の住宅新築の時点(平成26年2月14日)で、その土地所有していましたから(現在も所有されていますが)、これもクリアです。
1-3.減額される額
続いて、減額される額を求めます。
下記のとおり規定されています。
① 45,000円
② 土地1㎡当たりの価格×(住宅床面積×2 ※200㎡超える場合は200㎡が限度)×3%
①、②のどちらか高い方の額が、土地の税額から減額されます。
②の式を使って、金額を計算してみます。
1-3-1.土地1㎡当たりの価格
まず、土地1㎡当たりの価格ですが、
Aさんのケースだと
24,404,000円(課税標準額)÷2=12,202,000円
と計算しておいて
(※宅地を平成30年3月31日までに取得した場合については、課税標準額を2分の1した金額が不動産の価格となります)、
これを土地の平米数、187.90㎡で割ります。
12,202,000円÷187.90㎡=64,938円(→㎡単価が出ました)
1-3-2.「(住宅床面積×2)」の部分
つぎに、
(住宅床面積×2)のところですが、
これは単純に
Bさん宅の床面積123.79㎡×2=247.58㎡とするだけです。
今回のケースでは、200㎡を越えますから、ここは限度の200㎡までを採用します。
1-3-3.減額分の計算
あとは、税率3%を掛けるだけ。
まとめると、
64,938円(㎡単価)×200㎡×3%=389,628円(減税額)
となります。
①45,000円と、②389,628円を比べ、高い方の②を採用します。
1-3-4.税額を出します
最後に先に見た計算式、
にあてはめます。
当初税額は、Aさんの資料によると、366,000円※でした。
※計算式
24,404,000円(課税標準額)÷2=12,202,000円
12,202,000円×3%=366,060円
あてはめてみると、
となりました。
今回、Aさんは土地についての366,060円を納める必要がなかったのでした。
また、今回、土地が奥様(Aさん)、建物はBさんと名義は異なっていましたが、これはこの問題にあたり気にする必要はありませんでした。
2.家屋の不動産取得税
取り壊した家屋について、既に納めた取得税はどうなるのでしょうか?
Aさんのケースですと、
建物(古家)の取得は平成24年2月14日。
平成24年5月中に解体し、その後平成24年6月12日建物滅失の登記済み。
大阪府のサイトに明確な回答はなかったので、府税事務所に問い合わせてみたら、
「家屋を取得して、4か月以内に取壊し、建物滅失の登記が終わっていたら、家屋分について納めた不動産取得税は免除される。既に支払っている場合は還付手続をしてください」
とのことでした。
そうすると、Aさんは、ぎりぎりでこの条件もクリアできることになります。
建物についての取得税はAさんの資料によれば、
428,000円(課税標準額)×3%=12,800円となりますが、これについては0円
となります。
土地と違い、今回のケースでは、「減額」の結果、納付する必要がなかったのではなく、「免除」されるので納付の必要がなかったことになります。
3.還付の手続き
そうすると、今回AさんBさん夫妻は
既に納めた、土地の366,000円と建物の12,800円、合わせて378,800円の還付請求をできることになったのです。
3-1.還付に必要な書類
Bさんに府税事務所に連絡してもらい、還付に必要な書類案内を送ってもらうことになりました。
揃える書類は、以下のものです。
1 特例住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額(還付)申請書
2 不動産売買契約書(コピーでOK※)
3 不動産売買決済時の領収書(コピーでOK)
4 土地の謄本(全部事項証明書)(コピーでOK)
5 建物(古家)の謄本(閉鎖事項証明書)(コピーでOK)
6 建物(新築家屋)の謄本(全部事項証明書)(コピーでOK)
3-2.還付手続きをしに出かける
1は案内に入っていました。
2、3は自宅に保管してあるのでOK。
4~6は法務局で取得します。
1の申請書には、還付金の振込先口座を書く欄がありました。
一月ほどで振り込まれるそうです。
書類が全て揃ったところで、Aさんに府税事務所に行ってきてもらいました。
※係の人から、2の不動産売買契約書について、約款等を含めたコピーが要ると言われたそうですが、Aさんは原本を持参されていたので、その場でコピーしてもらい問題なかったそうです。
手続はこれにて終了です。
まとめ
不動産取得税は地方税なので、相談窓口は税務署ではなく、都道府県税事務所になります。
疑問に思われたら、納める前に相談されることをおすすめします。
納めても時効(5年)になること戻ってきませんから、取得税を払ったことがある方は還付ができるうちにやってみてください。
大石司法書士事務所では無料相談を実施しております。